背水の陣を敷く。
最近はあまり使われなくなってきている言葉かもしれませんね。
あなたはこの言葉の意味をご存知ですか?
自分の退路を断つことで決死の覚悟で事にあたる、という意味です。
逃げ場のない状況をあえて作ることで窮地を脱するのが目的なんでしょうが、私には別のことわざが頭に浮かんできてしまいます。
それは、
窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ)
です。
どちらも絶体絶命という場面における「火事場の馬鹿力」を発揮する状況という意味で似ているのですが、前者は自らその状況を作るのに対し後者は自分で意図したのではなく結果として追い込まれてしまった、という違いがあります。
まあ自分で意図せず窮地に追い込まれてしまうのは仕方ないとしても、自ら意図して窮地を作り出す「背水の陣」にどの程度意味があるのでしょう?
今回は「背水の陣を敷く」ことについて考えてみたいと思います。
背水の陣を敷く、の由来と正しい意味とは
まずは背水の陣を敷くの由来から。
これは中国の兵法書「尉繚子(うつりょうし)」に記されていたものと言われています。
尉繚子とは、孫子、呉子と並び構成まで高く評価された兵法書ですが、その内容がとても厳しく殺伐としたところがあるともいわれます。
まあ兵法書ですから、厳しいのが悪いとはいえないとは思いますが・・・
尉繚子によると、前漢の将軍である韓信が趙との戦いの際、川を背にして逃げ場のない布陣で臨むことで兵士の士気を高め戦いに勝利したといいます。
逃げ場がない、戦うしかない、勝つしかない・・・
こうした思考過程を経て普段以上の力を発揮することを期待した「かなり強引な」手法といえますが、現代社会においては本当の意味での「命がけ」というのはほとんどありませんから、ものごとに真剣に向き合えない人が自らを追い込むには有効な方法かもしれませんね。
リアルな世界に生きていない人たち
最近ではあらゆるものごとがスマホやPCを介して出来るような時代になっています。
なにか知りたいことがあれば検索エンジンで検索すれば、余程のことでもない限りほとんどの情報は瞬時に手に入れることが来ます。
友人と話がしたければSNSやメールを使えば済みますし、お腹が減ればネットから注文すれば小一時間も待てば大概のものはデリバリー出来ます。
おまけに旅行や恋愛までもがVRによって疑似体験できてしまいます。
あなたは家にいてスマホやPCに向かうだけ。
ただそれだけで人生が送れる時代になっているんですね。
つまりリアルな世界観を伴わない「無機質な」世界で多くの時間を過ごし、それでほとんどのことが体験できてしまうんです。
しかしその世界はどんなにリアルに近づけて作られていたとしても、所詮は「作り物」です。
これはリアルにはないメリットでもあります。
だって「作り物」ですから、上手くいかなければ何度でもやり直しが出来るんです。
これってお気楽ですよね?
ゲームをしていて敵にやられゲームオーバー、でも最初からもう一回、みたいな(笑)
ですから「自分には何でもできる」という錯覚に陥るんです。
上手くいかなければリセット、もう一度最初から。
これを何度も何度も繰り返せば、そのうち上手くいくときが来る。
やり直せるから何にでも気楽にチャレンジできる。
そして自分は「全知全能」なんだと思い込んでしまう。
程度の差はあれ、こういう人って多いですよね?
でもそれ、あくまで仮想世界での話ですから(笑)
現実世界ではそんなに上手くいきません。
対処できないと諦めてしまう「くせ」がついている
スマホやPCの画面上ならあんなにうまく出来るのに、なんでリアル世界では上手くいかないんだろう・・・
仮想世界ならリセットしてやり直せば良かったのですが、現実世界にはリセットボタンなんてありません。
上手くいかなくても「もう1回はじめから」が出来ない。その場を切り抜けるしかない。
つまり「先に進めなく」なるんです。
仮想世界なら無敵のあなたも、現実世界では手も足も出ない・・・
そこであなたの世界は行き止まってしまうんですね。
するとあなたは面白くないから「つまんない、やーめた」と諦めてしまいます。
現実世界はそんなに甘くありませんから、あなたはそんな社会からはみ出してしまうかもしれません。
さあ、どうしましょうか?
壁を見極める
あなたの人生には大小さまざまな壁が立ちはだかります。
難なく乗り越えられる壁もあるでしょうが、なかなか乗り越えられない壁も当然のことながらあります。
乗り越えるのが難しそうな壁が目の前に現れたとき、あなたならどうしますか?
立ちはだかる2種類の壁
なかなか超えられそうにない高くて険しい壁があなたの目の前に立ちはだかったとき、あなたには2つの選択肢があります、というか選択肢は2つしかありません。
ひとつは「乗り越える」もうひとつは「避けて通る」
この2つの選択肢以外にはないんです。
そして目の前の壁が2つのどちらなのか見極めて、乗り越えるか避けて通るかを決める。
人生はこの壁の処理を繰り返しこなしていくものなんですね。
この「人生に立ちはだかる2種類の壁」については、以下の記事に詳しく書きましたのでそちらも併せてお読みくださいね。
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壁を乗り越える方法は努力だけではどうにもならない場合がある
避けて通る壁
あなたの目の前に現れた壁が「避けて通るべき壁」だった場合、これは遠慮なく避けて通りましょう。
その壁はあなたの人生にとって「超える必要のない壁」もしくは「超えてはいけない壁」です。
ですからこの壁を避けても、あなたにとってメリットさえあれデメリットはありませんから安心して避けて通ってください。
乗り越えるべき壁
さて、目の前に立ちはだかっている壁があなたにとってどうしても乗り越えなければいけない壁の場合、避けてもまたどこかで同じような壁が必ず立ちはだかってきます。
乗り越えるべき壁からは逃れられません、遅かれ早かれ乗り越える必要があります。
この壁を乗り越えないと、あなたの人生はピタリと成長が止まってしまいます。
ですから何とかして乗り越えることをオススメします(笑)
でも高くて頑丈そうな壁だとどうやって乗り越えたら良いか分かりませんよね?
実は乗り越える方法は「ひとつ」しかありません。
それが「背水の陣を敷く」です。
背水の陣を敷く「効果」とは?
ちょっとやそっとじゃ乗り越えられそうにない壁は、小手先の技でどうにかなるほど甘くはありません。
正直、諦めたくなる気持ちも分かります(笑)
でも諦めたところで「乗り越えるべき壁」なら、何度でもあなたの前に現れますから、いつかは乗り越えるしかないんです。
だったらさっさと乗り越えてしまいませんか?
そこで「背水の陣」です。
何度でも現れるなら、もうさっさと超えてしまおう、そのためなら何だってやってやるぞ!苦労するなら1回だけで終わらせたいし。
そのために退路を断つんです。
なんて大袈裟に聞こえますか?
でも実際にやってみるとたいしたことなかったりするんですよ。
やったことがないから、やたらと大きくて頑丈そうに見えるんです。
でもあなたが本気で取り組めば、大概のことは何とかなるものなんです。
がむしゃらに乗り越えることで「成功体験」が得られる
そうやって壁を乗り越えたときに「なんだ、やれば出来るじゃないか」という自信がつくんです。
実はこれが得がたいほどに大切なものなんです。
諦めずにやれば自分にも出来たじゃないか、という「成功体験」を積み重ねていくことで、あなたのリアルな人生の可能性が大きく拡がっていくんです。
バーチャルではない「リアル」な体験
そしてもうひとつ、この成功体験はあなたにとって「本物の体験」なんです。
スマホやPCあるいはゲームの中でのバーチャルなものではなく、リアルな体験です。
これは体験すれば誰にでも分かることですが、バーチャルな体験とは比べものになりません。
体験することにより得られる情報量はハンパないですし、達成したときの感動も筆舌に尽くしがたいものがあります。
頑張って、歯を食いしばって、背水の陣を敷いて壁を乗り越えた者だけが味わうことの出来る最高のごちそうです。
リアル世界で頑張っている人たちはこのことを知っているので頑張れるんです。
得られるものの勝ちが分かるから何度も新たな壁を乗り越えるんです。
そして達成感という美酒に酔うんです。
まとめ
背水の陣を敷く。
なにもそこまでしなくても・・・と思う気持ちも分かります。
でも、そこまでしても味わいたい世界もあるんです。
申し訳ありませんが、これは味わったことのない人には決して分かりません。
でも誰でもその気になれば味わうことの出来るものでもあります。
良いじゃないですか、人生で一度くらい本気で何かに挑んでみても。
それでダメなら金輪際、背水の陣なんて敷かずに生きていけば良いんです。
決して悪いことではありません、それも生きていく上での選択肢ですから。
人生なんて長くても100年足らずです。
出来ることなんて限られています。
何をやるかやらないか、全てはあなた次第です。